ぶろぐ・とふん

扉野良人(とびらのらびと)のブログ

『浮田要三の仕事』の刷抜き

 7月21日発行の『浮田要三の仕事』(りいぶる・とふん刊)の刷抜きを国際印刷出版研究所のMさんが、大阪から京都まで出向いて届けてくださった。昨日まで、三日間をかけて316ページの本文ページが印刷された。



浮田要三の仕事』刷抜き


 『浮田要三の仕事』の判型は 254×269mm と、B4変形のやや横辺の長い正方形に近い形である。10インチ盤LPジャケットくらいという言い方も出来ようか(12インチレコードが一般的なLP盤の大きさだが)。とにかく大きな本になる。
 1ページがそれだけ大きいと、印刷機にかけられるページ数も1台につき12ページだった(通常、1台 - 16ページ)。4色のページは片面を刷ったあと、1日寝かせ(インクの乾燥を必要とする)、翌日もう片面を刷って仕上げたそうだ。折りに入る前にも1日以上、乾燥させる時間を取らないと、重なるページの白い部分(インクの乗ってない余白)に反対のページの印刷面が転写され汚れてしまうことがある。昨日、印刷が終わったので、折りにかかるのは月曜日になる。

 『浮田要三の仕事』の本文刷抜きのページをめくり、気になる色の作品をチェックしたが、浮田さんの作品の印象に近い色が出ていて、ほっと胸をなでおろした。じっさいの作品とは、ちがうのかもしれないが、まったく同じ色の再現というのは不可能だ。画像のレタッチをできるところまで、藤井豊君がやってくれたと思う。撮影した場所も光も時間も撮影機材も異なる画像データを、作品集のなかで同じ調子に揃えねばならなかった。

 折りが終わると製本の工程に入る。これも一冊一冊、手仕事だという。多くの職人さんの手を介さねば一冊の本はできあがってこないのだ。


浮田要三の仕事』


 本書は、美術作家・浮田要三(1924 - 2013)の1955年から2013年の58年間にわたる作家活動を、その作品を中心に構成したものである。浮田は自身を具体の作家であり、同時に現代美術の作家と位置づけていた。それは現実(存在の不安)を超えて、新しい現実(新しい人間像)へ至るための現代美術であった。作家の軌跡をたどりながら、過去の作品が偽らず現代の作品として生命を宿していることを明かすとともに、それは具体美術の作家として、「新しい物質の生命の発見」を希求した浮田要三の、「未知の世界への果敢な前進」(吉原治良「具体美術宣言」)の足跡である。


編集人:浮田要三作品集編集委員会(小粼 唯 - 小橋慶三 - 猿澤恵子 - 扉野良人
テキスト(全テキスト英訳):井上明彦、おーなり由子、加藤瑞穂、貞久秀紀、平井章一
エディトリアル・デザイン:扉野良人
制作人:小崎唯
発行所:りいぶる・とふん
発行人:井上 迅
発行日:2015年7月21日
書籍体裁:250×265mm(B4変形版)/316ページ/角背背継上製本/PET材透明カヴァー
定価:10,000円(税抜)