ぶろぐ・とふん

扉野良人(とびらのらびと)のブログ

かまくらブックフェスタ 第7回

かまくらブックフェスタ

10月7日(土)/8日(日)
10:00〜18:00



    Livre TOFOUN
 りいぶる・とふん

 
 今年もかまくらブックフェスタ、りいぶる・とふんで出展します。


 今年は私家版を一冊、作りました。
 加藤彩子さんの『ぼくねこ』という本です。







 この本は、加藤彩子さんの「2007年の秋から/2016年の冬まで/おもに祖母との手紙のやりとりのなかで/書いた/我が家のできごとです」とあとがきにある、小さなイラスト集です。彩子さんの家族が、ねこの姿で、お雑煮を食べたり、旅行したり、喧嘩したり、磯遊びをしたりする様を、ペン画に短い言葉を添えた日記のような本です。ひとつ申し添えると、ここに登場するねこの弟は四年前に亡くなった。でも、わたしはこの本を作りながら、そのことは出来るだけ頭から追いやって、たんたんと絵と言葉を並べました。
 ねこたちは、ページのなかで、今あったことだけを生きています。ねこには、今だけしかなく、おそらくその記憶は前後数分の過去と未来しか持たないのだろうと、見ていてわかります。でも、他者の認識はあって、ひとりぼっちのようでいて、いつも家族を意識している、それが猫の習性です。


 りいぶる・とふんから、四年前に『僕、馬』という写真集を刊行しましたが、それとこの本は直接の関係はないのですが、「ぼくねこ」というタイトルはずっと前から決まっていたそうで、制作を引き受けた版元(つまりりいぶる・とふん)に、猫と馬、ひらがなと漢字という大きな違いがあるにもかかわらず、どういうわけかとても似た名の本が偶然あったまでです。
 とはいえ、版元として、親戚のような本を作ったように感じています。でも、「ぼくいぬ」や「僕、鹿」とシリーズ化することはないので。あくまで独立した一冊です。


 『ぼくねこ』は、プライベートな本ですが、加藤さんに頼んで、かまくらブックフェスタで初めてお披露目します。

 どうぞ手にとって連れて帰ってください。



『ぼくねこ』

著者(文と絵):加藤彩

りいぶる・とふん/2017年7月30日発行
判型:三六版:173×81mm/背継上製本
本文印刷:墨-単色刷り/68ページ/
作品点数:イラストレーション29点
装幀:扉野良人
部数:300部
定価:2,000円(税込)


 昨年、わたし(りいぶる・とふん)は、ここ、かまくらブックフェスタで、「生存のための書物」とはなにか?
という問いを得た。「書物」という言葉を、「書く物」と解体して、見えてくる光景がある。「ぼくの存在描写は、ある冬の闇夜、大平原の片隅に深く掘り返された畑の上で、雪と霜におおわれ、地面に斜めにひょいと突き立てられた、用もない棒切れ」と記したカフカ。一本の棒切れのような、みじめな存在が、「書く物=ペン」となって、カフカには握りしめられていた。「君と世界の戦いでは、世界を支援せよ」という、カフカのよく知られた警句。これを、わたしは「君と書物の戦いでは、書物を支援せよ」と読み換えたい。それは、「書くこと」が、書かれる前の「書物」を支持体にした、捨て身での自己の反転地として「世界」を支えている。

 チラシに寄せた文です。



りいぶる・とふん刊行書案内



浮田要三の仕事』




編集人:浮田要三作品集編集委員会
〈小粼 唯 - 小橋慶三 - 猿澤恵子 - 扉野良人
テキスト:井上明彦、おーなり由子、加藤瑞穂、貞久秀紀、平井章一
エディトリアル・デザイン:扉野良人
制作人:浮田綾子-小崎 唯
発行所:りいぶる・とふん
発行日:2015年7月21日
書籍体裁:254×269 mm(B4変形版)/316ページ/角背背継上製本
定価:10,000円(税抜)


浮田要三の仕事』は、浮田要三(1924 - 2013年)の半世紀以上にわたる作家としての仕事をまとめた。
 浮田の創作は1955年、吉原治良率いる具体美術協会へ参加したことに始まる。浮田は1948年創刊の子どもの詩と絵と綴り方(作文)の投稿誌『きりん』の編集者だった。表紙画の原稿を吉原の家へ取りに行ったのが出会いで、彼の許に集まる同世代の若い作家と交わるようになり、浮田自身も『きりん』編集と並行して創作に乗りだしたのだった。
 吉原はじめ具体メンバーは、『きりん』誌面に踊る子どもの自由奔放な表現に驚き、なおかつ自分たちの創作にインスピレーションを得た。子どもの絵とほとんど変わらない具体メンバーの作品が『きりん』の表紙を飾ったのは浮田の采配でもあった。
 浮田は編集者を通じて作家になったのだが、それは経歴上のことで、浮田が終生大事にしたのは「人間の値打ち」がどこにあるかだった。その上で「芸術が本来の人間の仕事」だと考えてきたからである。
 しかし、浮田の来歴は身の振り方、すなわち生き方として興味深い。『きりん』が経営上立ち行かなくなり、版権を東京の出版社に委譲すると(浮田は『きりん』を編集だけでなく運営もしていた)、具体もやめてしまって、小さな袋工場を営んだ。1960年代、日本が高度経済成長の真っ只中にあるときだ。この時期、いっさいの創作から離れた。
 浮田が本格的に創作活動を再開するのは七十歳を超えてからである。
 しかし、その十年くらい前から、徐々に作品制作を再開していた。1983年に具体メンバーだった嶋本昭三に誘われてドイツ、デュッセルドルフに現地で制作、発表するグループ展へ参加したのが、浮田の意欲を駆りたてた。「作品をつくるために、それ以外の実生活をどう考えて行為するかということの大切さを60歳間近になってはじめて学んだ」という。
 その頃の作品に「帽子(ハット)」の連作がある。白の絵の具で固められた帽子が、それも一面を白く塗ったキャンバスに引っかけるように置かれた、虚飾のない作品である。浮田を知る人は、彼の頭にはいつも帽子があったことを思い出す。だから、白い「帽子」は浮田の自画像だろうと首肯く。
 人が人として、自分が自分から隔てられているという壁に突きあたり、その壁(キャンバス)へ、かぶっていた帽子をそっと置いたところに、浮田の「真に在りたい深いねがい」が籠められていた。
 『浮田要三の仕事』は人間の値打ちの籠った作品集である。

 

『僕、馬』




『僕、馬 I am a HORSE』は、彼、藤井 豊が東日本震災の一ヶ月後の4月11日から東北沿岸部を約1カ月余りをかけて歩き、撮ったものである。

りいぶる・とふん/2013年6月21日発行
菊版:223×157mm/角背ドイツ装(German Case [Bradel] Binding)上製本:ホローバック:透明カバー(PET)
本文印刷:マット墨-単色刷り/テキスト:日本語・英語
212ページ/作品点数:モノクローム約200点
栞-B6判4ページ:寄稿-荻原魚雷・河田拓也
800部/定価:3,800円(税込)





問合せ先:Livre TOFOUNりいぶる・とふん
〒600-8051京都市下京区富小路通り四条下る徳正寺内
tel / fax: 075-708-8303 e-mail: tobiranorabbit @ gmail.com
 

会場:

garden & space くるくる

〒248-0014
鎌倉市由比ガ浜2−7−12


 鎌倉駅からは、
 由比ガ浜大通りの六地蔵交差点を、
 和田塚駅へ向かう道に曲がります。
 ≪そうすけ≫さんや≪ete≫さんが建ち並ぶ道です。
 まもなく、三井リパーク前に、
 左に曲がる小道が見えます。(ライステラスさんの
 看板が出ています。車は基本的に入れません)。
 30mぐらい歩くと、線路踏切前の左側に在ります。


問い合わせ:港の人
〒248-0014 鎌倉市由比ガ浜 3-11-49
tel 0467-60-1374 fax 0467-60-1375
mail:kamakura@minatonohito.jp